11月に入ると、化粧品各社は「クリスマスコフレ」や「セット」の販売に入ります。売上を上げるための季節限定商品です。年末商戦に入るのです。クリスマスを意識した、キラキラ感は外せません。
「限定色」や「ポーチ」、「バッグ」「チャーム」「ミラー」「アクセサリー」など、特別なものを入れたメイクアップセットだったり、スキンケアセットに「ミニサイズ」をつけたり、「増量サイズ」にしてみたり。
どれも特別仕様なので「数量限定」で、決して安い価格ではありません。なんだかお得に見えたり、魅力的に見える演出で、お財布の紐が緩くなりそうです。同じ商品を販売するにしても、違った演出でお客様にアピールできます。メーカーの提案とお客様のニーズが合えば、お得なセットです。お客様は、限定品に弱いものですし、年末で、「一年間頑張った自分にご褒美を！」「来年は心機一転！」「新しい自分を始めよう！」的な気持ちが後押しをします。
メイクアップのクリスマスコフレは、限定色＋プレミアムグッズの組み合わせで、この時期に映えるキラキラ感満載。気分が上がります。価格は、限定スキンケアセットよりは安価ですし比較的手に入れやすいので、使用してみて自分には似合わなかったとしても傷は浅い（笑）。
問題は、ホームケア用ベーシックスキンケアの「ミニセット付き」「増量」タイプです。このタイプはクレンジング、洗顔料、化粧水、乳液、（ナイト）クリームとかのベーシックスキンケアのシリーズ使いが基本（メーカーによって３〜７品程度前後）で、プレミアムグッズ（毎年変わります）がセットされていたりします。
きちんと全てのベーシックスキンケアを使用している人なら、本当にお得なのですが、一部しか使っていない人の場合は、余計なお金が出て行くわけで、決してお得ではありません。
セットで買ったところで、生活習慣として使用することが組み込まれていない商品は、結局使わず持て余してしまいます。そうすると、また来年買おうという気持ちは起きません。
例外的に、本体よりもオマケが欲しくて購入する人がいらっしゃいますけれど。
「圧倒的な魅力」で売れる商品が、世の中にはあります。 残念ながら、大部分の化粧品はコレクションアイテムやブランド品ではなく消耗品です。
ベーシックスキンケアを変えてみた！というタイミングの人なら、BA（美容部員）さんのお勧めで一度は購入されるかもしれません。消費者は浮気なものなので、短期的に売上目標をクリアするならば、販売店としては一度限りのお付き合いになったとしてもOKです。仕入れた季節限定品は売り切ってしまわなければ、お金が回らなくなってしまいますし、メーカーも作ったものが倉庫に残ってしまっては一大事。販売キャンペーンで美容部員や販売店を煽ります。目標数をクリアできれば、美容部員さんの達成感は大きいでしょうし、キャンペーンのご褒美を手にできます。気持ちいいですよね？では、お客様は気持ち良くその商品を購入されました？双方が気分良くやりとりができていればいいのですが、いかがでしょうか？
達成感を得るために、強引に「セット」を販売できたとしても、それが理由でご縁があった顧客を失ってしまっては元も子もありません。毎月売上を確保するために、より強引な販売を仕掛け続けることになり、固定客も失ってしまう悪循環に。販売店側、お客様双方のストレスが増幅したままで良いのでしょうか？多分、どちらも持たないでしょうね。新規のお客様を獲得するのは、既存のお客様をサポートする労力の５倍必要だというデータもあるそうです。売上をコンスタントに上げていくためには、固定客の購入金額をベースとして、コフレやセットはあくまで上乗せ分で、新客獲得のきっかけの一つというスタンスでいて欲しいと思います。
売上のベースである「ファンという固定客」になってもらうには、ニーズを理解して「シリーズで使ってもらうメリット」や「お手入れを面倒くさくならないで続けてもらうための魅力づけ」や「お客様の努力の成果」に気づいて応援することなど、まめで地道なコミュニケーションで信頼関係を築くことです。決して「応酬話法」や「専門用語や美容成分の凄さを語って煙に巻く」といった、販売テクニッックではないのです。