「強制」と「お願い」と「当たり前」の間。
- reethihandhuvaru
- 2019年1月16日
- 読了時間: 5分

現場にいると、「ええっ!!」という場面に出会ってしまうことがあります。
当時、私が担当していたサロンのスタッフからの抗議&相談の電話。
半年ほどサロンに在籍していた彼女が、納得できない内容とは・・・。
「辞める時に、買ってもいない化粧品のテスター使用料を給料から差し引かれた!!」
でした。
・・・詳しく双方からお話を聞きますと、以下のようなものでした。
買ってもいない化粧品のテスター使用料
スタッフが自宅でメイクをして来ずにサロンのテスターで化粧をすることに納得できないオーナーが、時給から「テスター使用料」と言う名目で差し引いたのでした。
オーナーは、「メイクは自分の化粧品を使用して欲しい」し、このサロンで働くからには「サロンの取扱商品を使用するのが当然でしょ?」と思っていました。
でも、スタッフは一向にサロンでメイク品やスキンケア商品を購入してくれません。
いつも開店前にサロンのテスターを使って、スタッフはメイクを完成させていました。
お客様に使用するためのテスターがどんどん減って行きます。
スキンケア商品も、技術取得の練習にはテスターを使用させていましたが、それだけ。
感触や使用感を実感していないので、接客の際のトークもイマイチ説得力が無い。
不満が募って来ていました。
テスターは商品と同様、購入しなければいけないのです。
費用が、かかっているのです。
スタッフは、お金を稼ぎに来ていました。
家計を支えるために、そして、お小遣いを稼ぐために。
「ウチの化粧品でメイクした顔でお客様を迎えて欲しい」と言われたので、仕事をするためにテスターを使用してメイクしました。
お金を、自分が愛してもいない化粧品を購入するために使いたいとは思わない。
・・・当たり前ですよね?
例え、社販があったとしても。
自分が欲しいものにお金を使いたい。
サロンの化粧品を買うために、スタッフ募集に応募したのではないのですから。
オーナーの「早く購入しろよ!」と言う気持ちが、人間関係を悪化させてしまいました。
スタッフが商品を好きになってくれたら、お客様へのお勧めの仕方や販売トークが磨かれていくはずだったのに・・・残念なことでした。
そもそも、「商品と縁もゆかりもないスタッフ」をファンに育てることが出来たなら。
「お客様を商品やサロンのファンにするスキル」は、もっと向上したでしょう。
互いに面会を拒否したため、「テスター使用料」は代理店経由で返却をしてもらいました。
お互い二度と会いたくないと言う気分だったでしょう。
オーナーの気持ちが分かる方も多いと思います。
自分で買いなさいよ〜!!化粧品の仕事をしているんだから〜!!大した金額じゃないんだし、社販だってあるんだし〜!!・・・と思う方が、きっといらっしゃる。
人間関係がこじれて表面化したお話でした。
しかし、相手の立場に立てば、これがいかに理不尽なことかも分かります。
サロンのオーナーがしたことは、腹立ちまぎれの意地悪(もしくは仕返し)に過ぎなかったのですが、根底には「仕事をするなら商品を買え!」と言う考え方がありました。
顧客をファンに育てていくのと同様に、健全にスタッフをいかにファンに育てるか?
・・・皆さんの手腕にかかっています。
*****
別な業界にも、似たような話が沢山ありますので、以下の事例を参考までに。
・他社ディーラーから転職して来た社員に、自社の車に買い替えろ!と上司が圧力をかけたと言うお話。
従業員が通勤に使っている「他社の車」が問題だと考えるなら、通勤用に自社の車を貸与する、もしくは、お客様から見えない場所の駐車場を利用してもらう等、体裁の整え方はある程度あったと思います。(現在、訴訟になった案件はネットでは見かけなくなりました。)
他人の財産(車)に対して、買い替えを強要することなど、本来は出来ないはずですよね?
(該当者がセールスで、お給料が販売歩合制の場合は、自社の車の購入を必要経費とすることもありますので、一概には言えないのですが。)
・アパレル従業員は、販売の際に「自社商品着用の要請」があるようです。
いくら社販があるとはいえ、かなりの金額を支出する羽目になります。
従業員が、メーカーの「売り上げの見込める割引客」になっているとも言えます。
本来はメーカーが、販売スタッフにメーカーの制服なりを供給すべきことのように思います。
・・・本人がそのブランドが大好きで、社販を利用している分には問題はありませんけれど。
どちらの業界も、多くは「強制」ではなく「お願い」だと仰っています。
それなりの圧力があるのは、「自社商品を使わない人が商品を勧めても、説得力がないでしょう?」と言う論理があります。
・「仕事を提供するので、そのために必要なパソコンを買え!」といった商法があります。
特商法に抵触する「業務提供誘引販売」と言います。
最初からパソコンを購入させる目的なのを隠して、「仕事」と言う人参をぶら下げている悪質な商法です。
・・・では、「スタッフにはエステティックの認定証を取得してもらう。そのためには、必要な化粧品セットを一式購入してもらうことになるから、宜しく。」と、当たり前のように言っていたとしたら??
「業務提供誘引販売」と、どこが違うのでしょうか?
最初にそれを言われたスタッフが疑問を抱いて、消費生活センターに相談した場合、どんな判断が下るでしょうか?
指導や内容確認をされても、何ら不思議はありません。
ですから、「仕事のスキルを身につけてもらうために必要なもの」は、基本、運営側が用意するものだと、しっかり心に刻んでおいていただきたいと思うのです。
そして、スタッフを大切に育てていただきたいなあ・・・と思います。
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